労災リスクをAIで軽減 危険予知高度化と安全管理システム構築を目指す電源開発とACESの取り組みとは

Client
J-POWER
Business
建設・プラントのDX
Keyword
  • ヒトの行動特定

日々の生活に欠かせない電気。特に昨今は、石油燃料に代わるクリーンなエネルギーとしての可能性も期待されています。そんな生活インフラを古くから支えるのが、水力発電および火力発電による電力の卸売事業を展開する電源開発株式会社(以下、J-POWER)です。J-POWERは戦後の日本の電力不足を克服すべく1952年に政府主導で設立されて以来、日本各地への電力の安定供給に貢献。2004年の民営化以降は、成長が見込まれる海外での発電事業や、風力発電、地熱発電といった再生可能エネルギーの開発など、事業のフィールドを拡大してきました。

そんなJ-POWERでは発電所などの作業現場における「安全性の向上」を中長期のテーマとして掲げており、AIなどの新しい技術を用いて労働災害リスクを軽減するための取り組みが進んでいます。

今回はJ-POWERと株式会社ACES(以下ACES)が取り組む、画像処理AI技術を用いた、危険箇所と作業員の検知、不安全な状態や行動の判定に関する協業プロジェクトの裏側に迫ります。

プラント運用をリードするJ-POWERが、AIを用いた現場の安全管理支援に取り組む背景

「J-POWERでは昔から『労働災害対策』への意識は高く、現場に安全管理者を配置するなどの取り組みを兼ねてから実践してきました」と語るのは、デジタルイノベーション部の森田さん。しかし、作業現場の広さは様々で、多いときには10数名の作業を1名で監督していることも。隅々まで目を光らせているものの安全管理者が現場の全てを管理することは難しいと指摘します。また、現場に潜む”危険”を予見するためには、多様な現場を経験してきたベテラン作業員/監督者の知見が必要となりますが、少子高齢化や業界全体の人材不足が予想される中、ベテラン監督者の知見をいかに維持し伝えていくかが重要な論点となっています。

そこで、J-POWERは遠隔からも現場を監視支援することで、現場の安全管理者をサポートする「次世代の安全管理システム」の実現に向けてACESとの技術検証に着手しました。

目指すのは「遠隔からの後方支援者を支援するため」の不安全行動検知

「『次世代の安全管理システム』を実現するには、まずは危険な状態の定義が必要です」と語るのは、ACESでDXプロジェクトのマネージャーを務める與島さん。ACESとJ-POWERは議論を進めていく上で、「現場の労働災害事故を減らすために検知すべき行動とは何か」「後方支援者が複数現場を管理する際に着目すべきシーンとは何か」といったAIで検出すべきシーンを定義し、その上で、技術的実現性と優先順位付けを行い、中長期にわたるロードマップを策定しました。

参考:J-Power x ACES プロジェクトの始め方 powered by Plug and Play

接近検知と高所作業人数カウント

本プロジェクトにおいて、まずは複数箇所を同時に管理する際に重要度をつけて管理しやすくするために、「高所・開口部作業人数者カウント」「開口部接近検知」の技術検証からスタートし、現在はさらなる検知メニューも含めて開発検証を行っています。

①接近検知

建設・プラント業界におけるAIカメラを用いた「不安全行動検知」のなどの事例はすでにありましたが、危険エリアでの作業が避けられない現場において、既存の侵入検知技術だけでは不必要な検知も多くノイズになってしまうという課題がありました。そこで、「侵入検知」ではなく、「危険エリアへの接近検知」、特に警告を挙げるべき接近状況を把握するアルゴリズムを開発しました。

②高所作業人数カウント

国内の建設現場における労働災害のうち、死亡につながる重大事故の*約4割を占めるのが「墜落・転落」で す。現場監督が高所作業を常に見守ることは難しく、遠隔管理者が複数現場の高所作業を見守る仕組みが必要でした。そこで今回のプロジェクトでは遠隔管理者の見逃し防止のためのアルゴリズムを開発しました。

*厚生労働省 平成30年労働災害発生状況:https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000555711.pdf

今後の展望

労働人口減少や働き方改革への対策が急務となる中、プラント現場では「効率的・高度な作業現場の遠隔管理」を通じた安全性の向上が求められています。今後は現場での実用化に向け、すでにJ-POWER社内で利用されているカメラシステムをベースとしながら、安全AIシステムのアルゴリズムの拡充・精度改善や、実際に現場でシステムが利用されるための業務要件の再設計まで、DX実現のパートナーとして伴走し両社での実現を目指します。

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